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  • 執筆者の写真劇団ワンオアエイト

作・演出 田村孝裕より皆様へ 

更新日:2020年1月16日


「誕生の日」というタイトルは内容が決まる前から考えていた。劇団のキャリアが20年を越え、リスタートの心持ちでいたからだ。今一度、劇団や自分を見つめ直す、そんなタイミングというか機会だったように思う。

劇団としての課題はまだまだある。近年は主演に著名なゲストを迎えていたが、今回は山口森広が主人公を務める。

山口は芝居の裏回し的なポジションが多く、面白いことが大好きな彼は笑いを求めるあまり迎合するような芝居になりがちなところがある。それを防ぐためにコンプレックスを持つ女性の役を振り、心の機微を丁寧に表現することを心がけてもらった。女性の役を山口が演じることをネタにするつもりは一切ない。

座長恩田の芝居はとにかく暑苦しい。さらに厄介なのは芝居になると急に格好つけることだ。ブサイクのくせに。このまま情熱的二枚目路線を進めさせるわけにはいかない。感情よりも台詞。そこで理屈しか言わない役を振った。案の定、誰よりも苦心しているがこれをクリアしてもらわないと私も困るのだ。

冨田の魅力は微細な心の揺れを表現することにある。むしろそれしかない。だが劇場が大きくなるにつれ、微細な表現は失われていった。否。通用しなかったのかもしれない。近年、空気になりつつある存在感をもう一度取り戻すべく、冨田が一番不得手な恋心の表現に着手している。

伊藤は社会不適合者である。それを自覚するあまり、世の中を斜めに見るような演技のチョイスが多い。しかし彼は誰よりも真っ直ぐでピュアな人間でもある。四の五の考えずに、実直に、振り切ったヤンキーの役を振ってみたら、今の所、変な感じになっている。


劇場は日暮里d−倉庫。20数年前の旗揚げ公演を想起させる小さな劇場である。小さい空間だからこそお客様への誤魔化しは効かない。反対に、小劇場ならではの臨場感と生々しさをより表現できる。リスタートにふさわしい劇場だと思っている。

私自身の課題や本作への想いは劇場のパンフレットに記載しているので、ぜひ、そちらをお読みいただきたい。それらをクリアできたかどうかはお客様の判断に委ねるしかないが、今の我々の精一杯を表現したつもりだ。そんなリスタートの背中を押してくれている客演陣も紹介したい。

西山竜一。舞台芸術学院の同期である。彼の包容力は当時から底を知らず、それを存分に活かした役、そして細やかな芝居をしてくれている。

平塚真介。図体がデカく強面。なのに有様は素っ頓狂。そんな彼のイメージを役の中でもきっちり再現してくれる。稽古場でも愛される存在だった。

もたい陽子。姉御肌が半端なく、場の空気を一変させる存在感は目を見張るものがある。しかし本人は献身的な良き女房。ギャップ萌えする女優である。

根本大介。彼から滲み出るスケールの小ささが好きだ。どうしようもない小物感が好きだ。お洒落なのにお洒落に見えない彼が大好きだ。そんな役だ。

松本亮。とにかく柔軟で人が良い。でも私は知っている。彼は猛毒を隠し持っている。彼が毒牙を剥く瞬間を見逃さないでいただきたい。

工藤さや。ワークショップで出会った。彼女が持つシニカルな視点が面白く、役では全体を俯瞰で見ている裏回しを担ってくれた。縁の下の力もちだ。

篠原彩。同じくワークショップで出会った。彼女の天真爛漫さは、芝居のテーマでもある無自覚な悪を体現する。物語の、そして我々のムードメーカーである。

 

誰の個性も被ることなく、まもなくお披露目する「誕生の日」。稽古場の肌触りを感じていただくには最初の土日がオススメです。恋愛経験のない40歳の女性を主人公に、私自身、初めてのラブストーリーを書きました。我々の新たな「誕生の日」が進歩なのか退化なのか、今から動悸が止まりません……。



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